井原君は、いつも落ち着いていた。
その雰囲気は、他の同世代の暴力団とは違っていた。
拘禁生活の経験が長いからなのか。
それとも、これまで生きてきた人生経験からくるものなのか。
理由は分からないが、井原君には常に余裕のようなものがあった。
私は、井原君と話す時間が少しずつ増えていった。
井原君の人生は、社会の中にいる時間よりも、塀の中にいる時間の方が長いらしかった。
両親との記憶はあまり残っておらず、祖母に育てられたという。
小学生くらいから施設で生活し、そこから学校に通っていたそうだ。
そうした人生経験からくるものなのか、
井原君はいつも、覚悟というか、腹を括っているように見えた。
私と井原君は、まったく違うタイプの人間だと思う。
それでも、なぜか互いに興味を持ち、次第に深い話をするようになっていった。
井原君は暴力団組員だった。
だが、私が知っているような現代的な暴力団というより、どこか不器用な、昔気質の暴力団のように感じられた。
井原君が言うには、今回は四、五年ほど刑務所に行かなくてはいけないだろう、とのことだった。
そんな話をしている時だった。
井原君は視線を合わせず、下を向いたまま、ぽつりと言った。
「この部屋も、いつバラバラになるか分からないですよね。
自分は、しばらくはここにいると思います。
バラされた時は……手紙、書いてもいいですか?」
私は少し間を置いてから答えた。
「もちろんですよ。
バラされた時は、すぐに手紙を書きますよ」
井原君は、何度かゆっくりと、深く頷いていた。

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