久しぶりに、独りじゃない朝を迎えた。
やはり人がいるのはいいものだ。「おはようございます」と声に出すのも久々だった。
いつもと変わりない朝食も、一緒に食べると美味しく感じられた。
ふと気になったのだが、お爺さんは私物をほとんど持っていなかった。
あるのは、ほぼ官からの支給品ばかりだ。
拘置所という場所は、お金がないと本当に惨めな生活になる。
自分でお金を稼ぐことはできない。入所した時に所持金がなければ、ずっと一文無しだ。
外からの援助がなければ絶望的で、官から支給されるのは必要最低限のものだけだった。
歯磨き粉や石鹸といった日用品は、多くの者が購入して使っている。
だが、お爺さんは支給品を使っていた。
歯磨き粉は、フィルムケースに入った粉洗剤のようなもの。
石鹸は横浜刑務所で作られている、通称「ハマセン」。
トイレットペーパー代わりのちり紙も含め、すべて一日に使う量が計算されて支給される。
ちり紙は一日十五枚。お腹を下したりすると、最悪だった。
部屋には各自に割り当てられた棚がある。
普通は日用品や嗜好品、雑誌などが置かれている。
朝食のあと、いつものように所定の位置に座ると、昨日のような沈黙はなかった。
井原君から話しかけてきた。
昨日のような鋭い目つきは消え、少し笑顔も見せた。
私は井原君と話しながら、お爺さんの棚を眺めていた。

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