緊張感と静けさの中、彼の新聞をめくるバサバサという音だけが部屋に響いていた。
どんな人なのだろうか。
誰も喋らず、沈黙が気まずくなり、私は彼に話しかけた。
「ちょっと聞いていいですか?」
彼は新聞を読むのをやめ、私をチラッと見て答えた。
「はい」
その目つきは鋭かったが、敵意がある感じはなかった。私の一つ下の、同世代だった。
彼は眉モンといって、眉毛の部分に刺青を入れており、指も三本欠損していた。着ているものも、ヤクザ特有のジャージ姿だった。
彼のことは、この先「井原」と呼ぶことにする。
井原君と話してみると、私が小学生の頃、三年ほど住んでいた市の出身だと分かった。少し共通点があったことで、井原君のほうからも喋るようになった。
やはり井原君は暴力団組員で、十代の頃から事務所に出入りしていたらしい。
鑑別所から少年院、そして成人してからは刑務所――そんな人生を送ってきたという。それは、雰囲気や立ち居振る舞いからも感じ取れた。
私と年齢は変わらないのに、指が三本もなく、鑑別所や少年院。
私が十代の頃には無縁だったものばかりだ。
いったい井原君は、どんな人生を歩んできたのだろう。
私は、井原君に興味を持ち始めていた。

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