ある日、朝食を済ませ、手紙を書こうと用意をしていると、
「おい。25番、移動だ。すぐに荷物をまとめろ」
と声をかけられた。
急いで荷物をまとめる。
施錠が解除され、ドアが開いたので廊下に出た。
次はどこへ行くのだろうか。
移動はいつも前ぶれもなく突然だ。
最近は、それにもあまり驚かなくなっていた。
「今日から雑居だ。一階まで降りろ」
その言葉を聞いた瞬間、思わず心が動いた。
雑居房に移動――。
もう雑居に戻ることはないと思っていたので、これは少し嬉しい驚きだった。
一階の雑居房エリアに着き、入れられた房は、以前と同じ四房だった。
まだ誰も移動してきておらず、部屋には私一人だけ。
陣さんや、お爺さんと過ごした部屋だ。
ほんの一ヶ月ほど前のことなのに、ずいぶん昔の出来事のように感じる。
お爺さんは、どこの刑務所に移監されたのだろうか。
あのささやかな忘年会のこと――
そんなことを思い出しながら、しばらく物想いに耽っていた。
そのとき、ガチャガチャと音を立てて施錠が解除され、ドアが開いた。
二人続けて入ってきた。
一人は無愛想に軽く会釈をして入ってきた。
誰が見ても分かる、いわゆる“ザ・ヤクザ”という雰囲気で、年齢は私と同じくらいに見えた。
もう一人は七十代くらいのお爺さんで、深々と頭を下げて
「宜しくお願いします」
と丁寧に挨拶をした。
私は
「こちらこそ、お願いします」
と頭を下げた。
もう一人の彼は、ちらりとお爺さんを見て頷いただけだった。
二人とも、私のような初犯ではなく、場慣れした“ベテラン”の匂いがした。
とりあえず三人とも所定の位置に座ったが、誰も口を開かなかった。
三人いるはずなのに、一人でいるような静けさと緊張感に包まれていた。

コメント