22話「鳥かごの中で歩き続けた日」

独居房に移って、初めての運動の日がやってきた。

人とまったく会話をしていない日が続いていたから、誰か知っている顔がいるかもしれないと、少しだけ楽しみに房を出た。

しかし、連れて行かれたのは、これまでの運動場とはまったく違う方向だった。

着いた場所は三階。

コンクリートでいくつかに仕切られ、出入り口だけが金網になっている空間だった。

通称、「鳥かご」と呼ばれている場所だという。

そのうちの一つの鍵が外され、中に入るよう命じられた。

入った途端、すぐに施錠された。

畳にして十畳ほどの広さ。

ぼんやり立っていると、

「じっとするな! 歩け!」

と怒鳴られた。

鶏小屋の中の鶏のように、鳥かごの中をぐるぐると歩き回る。

運動まで独りか、と落胆した。

運動が終わると部屋に戻され、また一人でじっと座って過ごす時間が始まった。

何かしないと、時間を持て余してしまう。

そのとき、雑居房にいた頃、組員の人が言っていた言葉を思い出した。

「本を読む人間は、懲役とか務めてるとき、時間を有意義に使うからな」

私はもともと本を読むのが好きだ。

まずは官本を借りて、読書をしようと決めた。

官本とは、拘置所で貸し出されている本のことだ。

早速、借りる手続きを済ませた。

その日の夕方、手紙が届いた。

差出人は、やはり組員の人だった。

彼は俳優の陣内孝則さんに似ている。

これから先は、陣さんと呼ぶことにする。

差出人と届先の住所が同じなのが、どこかおかしく、違和感があった。

陣さんは、便箋七枚にびっしりと書いていた。

今後の流れや、判決後のこと。

控訴して、過ごしやすい春になってからそれを取り下げ、懲役に行くつもりだという。

控訴すれば、高等裁判所のある地域の拘置所に移送されることになる。

そのときは手紙で知らせる、と書かれていた。

ここでの手紙には、何でもストレートに書けるわけではない。

ぼやかしたり、私たちにしか分からない隠語のような言葉で、やり取りをしなければならなかった。

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