15話「塀の上をユラユラ歩く」

拘置所では、すべてが突然やってくる。いきなりガチャガチャと鍵が解除され、ドアが開き、「四房、運動! 全員出ろ!」という流れだ。

三人で急いで廊下に出て気をつけ。

担当さんの号令に従い、運動場まで進むというか、行進する。

久しぶりに踏む土の感触。

広々とした場所。

それに、太陽の陽を全身に浴びた。

だが、運動場の周りには高い塀があった。

拘置所では、外に出るとき以外は手錠がない代わりに、この高い塀に囲まれている。

塀の外側には、普通の生活がある。

そう思うと、塀はより一層高く見えた。

運動という名目で、塀の中をぐるぐる歩き回りながら、ひそひそと雑談する。

他の房の者もいるので、ここは貴重な情報交換の場だった。

歩きながら塀を眺めて思った。

ここでは、みんな塀の上をユラユラと歩いている。

公判の結果次第で、塀の中に落ちるか、外に落ちるか。

運動があった日の翌日、いつもの調子でドアが開き、「四房、入浴! 全員出ろ!」という声が響いた。

ただ一つ違ったのは、入浴のときは房で下着一枚になり、そのまま入浴場まで行くことだった。

とにかく寒い。

入浴のときも、もちろん監視がある。

留置場とは違い、入浴のルールまで細かく決められていた。

洗髪から始まり、浴槽に入れるのは最後。

入浴時間は十五分で、それもタイマーで計られている。

「こらっ! 水を無駄に使うな!」

「こら! ちゃんと洗え!」

怒声は飛びっぱなしだった。

最後に五分間、浴槽につかれた。

浴槽では、じっとしているのが決まりらしい。

身体を掻くと垢が出て、お湯が汚れるからだそうだ。

少しでも動くと、また怒声が飛んでくる。

それでも浴槽には、垢が層になって浮いていた。

垢が浮いていようが、入浴は身体が温まる唯一の場所だった。

本当に気持ちよかった。

房に戻っても、三十分くらいはポカポカしていた。

社会では何でもないような当たり前のことが、ここでは幸せに感じられる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました