3.拘置所編

3.拘置所編

33話「覚悟を決めなきゃいけない夜」

ある日の午後、また突然ガチャガチャと施錠が解除された。「25番、弁護士接見」面会室に入ると、くたびれたスーツを着た、いつもの弁護士が座っていた。私が入っても視線は上げず、手帳をめくっている。「こんにちは」と声をかけながら椅子に座ると、「ああ...
3.拘置所編

32話「小さな紙に託されたもの」

いつもと何も変わらない。ゆっくりと時間だけが流れていく部屋。ふと横を見ると、いつものように少し下を向いて座っている井原君がいる。何を考えているのかは分からない。表情も変わらない。けれどその横顔には、彼が生きてきた人生の重みのようなものが滲ん...
3.拘置所編

31話「手紙、書いていいですか」

井原君は、いつも落ち着いていた。その雰囲気は、他の同世代の暴力団とは違っていた。拘禁生活の経験が長いからなのか。それとも、これまで生きてきた人生経験からくるものなのか。理由は分からないが、井原君には常に余裕のようなものがあった。私は、井原君...
3.拘置所編

30話「不正授受」

その日の午後、午睡が終わり布団を片付けていると、お爺さんは自分の布団も片付けず、棚の前でゴソゴソしていた。午睡止めの合図が聞こえたら、素早く布団を片付けないと怒鳴られ、叱責される。私は担当さんの見回りが来たらまずいと思い、お爺さんに声をかけ...
3.拘置所編

29話「棚の中のもの」

久しぶりに、独りじゃない朝を迎えた。やはり人がいるのはいいものだ。「おはようございます」と声に出すのも久々だった。いつもと変わりない朝食も、一緒に食べると美味しく感じられた。ふと気になったのだが、お爺さんは私物をほとんど持っていなかった。あ...