ラ・カシーナを出る頃、店は賑わい始めていた。
私はメイたちタレントに軽く挨拶をする。
「またネー!」
メイたちは笑顔で手を振り、私たちはその笑顔に見送られながらラ・カシーナを後にした。
リトをマンションへ送る車中、弘は楽しそうに言う。
「メイたちと会うとは思わなかったっすよ」
リトは少し笑いながら答える。
「シゲさんはタレントたちだけで行ったときは安くしてくれるから、仕事が休みの日はよくラ・カシーナに行くんだヨ」
「タレントたちだけ?」
弘が聞き返す。
「ウン。お客さんと行ったときは安くならないヨ」
そう言ってリトは続ける。
「だからタレントたちはアフターとか同伴でラ・カシーナに行ったりするんだヨ」
私は頷きながら言う。
「シゲさんが優しいから、タレントたちはラ・カシーナの売上に協力してるんだな」
「なるほどっすね」
弘は納得したように頷いた。
そんな話をしているうちに、リトのマンションへ着いた。
リトは私に向き直る。
「ナオト、それじゃジョアンに電話して家のこと言っておくネ」
「うん、頼んどくな」
リトは嬉しそうに頷くと車を降り、私たちの車が見えなくなるまで手を振っていた。
車を走らせながら弘が言う。
「リトとの話、だいぶ進んだみたいっすね。兄貴とリトが話し込んでたから、メイが『何の話してるの?』って聞いてたっすよ」
「ああ。仕事の話だけじゃなく、早苗と美緒の話もしてたからな」
弘は少し考え込む。
「あっ、リトにはまだ早苗姐さんのこと話してなかったんすか?」
そう言うと、少し申し訳なさそうな表情になった。
「俺、なんか余計なこと言っちゃったみたいっすね」
「いや、気にするな。リトにはいずれ話そうと思ってたんだ。お前が早苗の名前を出してくれたから、いいきっかけになったよ」
私は少し笑って言った。
「それなら……いいんすけど」
弘は少しだけ声のトーンを落とす。
私は弘の肩を軽く叩いた。
「気にするなって。リトに話ができたのは、お前のおかげなんだから」
「はい」
弘は照れくさそうに笑い、いつもの弘の表情に戻った。
街のネオンがフロントガラスを流れていく。
私は助手席の窓から夜の街を眺めた。
リトの言葉が、ふと頭の中によみがえる。
『バハラナ』
――もう仕方ない。
――なるようになる。
胸の奥にあった重さは、さっきより少しだけ軽くなっている。
私は静かに窓の外を見つめた。

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