早苗はコーヒーカップを両手で包みながら、私を見つめた。
「明日の午後、新しいスタッフが来るから、あなたも会ってみてよ。女の子だったら私や里奈、綾さんで問題ないけど、スタッフはあなたが会っておいた方がいいから」
私は小さく頷いた。
「そうだな。スタッフは女の子と違うからな」
早苗は少し考えるような表情を浮かべる。
「うん。私はあなたが決めたことをもとに動くんだから、会ってあなたの存在や考えを知ってもらえるだけで、私も動きやすい部分があるんだよね」
「分かった。それじゃ明日の昼頃には帰ってくるよ」
「ありがとう」
その時、テーブルの上に置いた携帯電話がメールの受信を知らせた。
私は携帯を手に取り、画面へ目を落とす。
「弘からだ」
メールには、
『お疲れです。ホームページの資料、受け取りました。時間あるときに連絡ください。』
と書かれていた。
「弘君、どうかしたの?」
早苗が不思議そうに尋ねる。
「ホームページの資料を受け取ったって」
そう答えると、早苗は「あっ」と声を上げた。
「ちょうど良かった! 大体の骨組みは出来てるから、あとは写真や文章を入れて整えたいんだよね」
「そうか。それじゃ弘に連絡してみよう」
私はすぐに弘へ電話を掛けた。
「兄貴、お疲れっす」
電話はすぐにつながった。
「お疲れ。預かった資料、茉莉花に持ってこれるか?」
「はい! 大丈夫っす。兄貴は茉莉花にいるんすか?」
「ああ、二階にいるから待ってるぞ」
「了解っす。今から行きます」
電話を切ると、早苗が微笑んだ。
「弘君、今から持ってきてくれるんだ。それじゃコーヒー淹れてくるね」
そう言って部屋を出て行った。
しばらくすると、一階から勢いよく玄関の扉の閉まる音が聞こえた。
「お疲れでーす!」
続いて早苗の笑い声が聞こえ、二人の話し声が階段を上ってくる。
やがてドアが開き、弘が笑顔で部屋へ入ってきた。
「兄貴、お疲れっす」
「おう、お疲れ」
その後ろから早苗も部屋へ入り、ドーナツショップの箱をテーブルへ置いた。
「これ、弘君からの差し入れ。それと一階の女の子たちの分もあるよ」
「ありがとうな。まあ座れよ」
弘は私の向かいへ腰を下ろす。
早苗はコーヒーを三人分並べると、私の隣へ座った。
「これ、預かってきた資料っす」
弘は封筒を早苗へ手渡す。
私は早苗へ視線を向けた。
「さっき見ていた口コミサイト、弘にも見せてやってくれないか」
弘はコーヒーカップを手に取りながら首を傾げる。
「口コミサイトって何すか?」
「弘君、これ見て」
早苗は立ち上がり、パソコンの画面を弘の方へ向けた。
画面を指差しながら、一つひとつ丁寧に説明していく。
弘は真剣な表情で画面を見つめ、何度も頷きながら話を聞いていた。
説明が終わると、弘は感心したように息を漏らす。
「すごいっすね。こんなサイトがあるんすね」
私はコーヒーを一口飲み、弘へ視線を向けた。
「早苗と、この地域に特化した口コミサイトを作ることにした」
弘はドーナツの箱を開けようとしていた手を止め、私と早苗を交互に見た。
「マジっすか! 早苗姐さんが作るんすか!?」
驚いた表情を浮かべる弘に、早苗は少し照れくさそうに笑った。

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