房に入った瞬間、目が合った。留置場で一緒に過ごした、あの人だった。
刑務官が施錠を済ませて立ち去ると、お互いに自然と笑顔がこぼれた。
自分が座る位置も、すでに決められていた。
急いで腰を下ろすと、小声でこう言われた。
「朝からずっと怒鳴られてたなぁ」
そう言って、その人は笑った。
留置場でよく雑談をしていた、暴力団組員だった。
さらにもう一人、留置場で一緒だった年配の人――お爺さんも、この房にいた。
さっきまであれほど張りつめていた空気が、少しずつやわらぎ、部屋全体が安堵感に包まれていった。
その暴力団組員の人は、これまで何度も拘禁生活を経験している、いわゆる「懲役太郎」だった。
何度も刑務所に行ったことのある人、という意味だ。
お爺さんは、三十年前に一度だけ、拘置所まで経験したことがあると言っていた。
暴力団組員の人に、小声であれこれ質問していると、
また、あの唸るような声が響いてきた。
一人だったら、またあたふたしていたと思う。
でも、もう一人じゃない。それだけで、心強さがまるで違った。
お爺さんは、さっとやかんを用意し、正座をして待っていた。
その唸り声が、何を意味しているのかも教えてもらった。
ほどなくして、お茶が配られ、そのあとすぐに夕食が運ばれてきた。
今日の夕食は、ハムエッグに、きんぴらごぼう。味噌汁と、麦の入ったご飯。
正直、ご馳走だと思った。
拘置所は、食事だけはいい。温かくて、量も多い。
食事をしながら話を聞いていると、
この部屋は、もともと三人で生活していたらしい。だが、そのうちの一人が、午後に保釈で出たという。
その代わりに、急遽、自分がこの部屋に入ることになったそうだ。
拘置所には、二人部屋はないらしい。
二人だと、喧嘩になったときに止める者がいないこと。それに、同性愛者の問題もあるからだと教えられた。
食事のあと、午後五時になると、冬の間だけ布団を敷いて入っていいという。寒さ対策らしかった。
三人になってからは、怒鳴られることはなかった。
もし、あのまま一人だったら。そう考えると、ゾッとした。
夜になると、スピーカーからラジオが流れた。
九時になると、また、あの唸るような声が響いた。
「消灯ー!」
ガチャン、という音がして、部屋は少し暗くなった。
拘置所では、完全に電気が消えることはない。
正確には、消灯ではなく「減灯」だ。
常に監視できるよう、明かりは残されているのだという。
午前中は、この先どうなるのかと思っていた。だが午後、まさかの再会があった。
この日の終わりに、そう思えたことが、本当にありがたかった。

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