朝、目が覚めると早苗はすでに起きていた。
キッチンからコーヒーの匂いがする。
いつもの朝だった。
「おはよう、起きてる?コーヒー淹れたよ」
早苗が部屋に入ってきて私の枕元に座った。
「おはよう」
私は目を閉じたまま言った。
「ねぇ、今日は何時頃出かけるの?弘君も一緒?」
早苗は私に添い寝するように横になり、私の腕に頭を乗せる。
「そうだなぁ、昼くらいかな。それから弘と合流する予定だよ」
私は目を開け、天井を見上げたまま言った。
「あっ!それじゃ、昼ごはんつくるから弘君も一緒に食べようよ!ねっ、いいでしょ?」
早苗は手を叩き、起き上がりながら言った。
「…うん、そうだな。弘に連絡してみるよ」
そう言いながら、弘と恵美の顔が浮かんだ。
私はリビングのソファーに腰を下ろし、携帯電話を手に取り、じっと見つめる。
「コーヒー置いとくね」
早苗はマグカップをテーブルに置き、キッチンに戻った。
コーヒーを一口飲み、弘に連絡した。
「兄貴、お疲れっす!どうしたんすか?」
いつもの弘だ。
「お疲れ…今日、早苗が昼飯一緒に食べたいって言ってるけど来れるか?」
「あっ…はい、大介がいるから行けるのは、行けるっすけど…。」
「それじゃ昼頃出てこいよ、早苗が楽しみにしてるから」
「…了解っす。それじゃ…昼頃にお邪魔します」
弘の声のトーンは低かった。
「弘君来れるって?」
「うん、昼頃出てくるって」
「分かった!それじゃ準備するね!」
早苗はキッチンから顔を出して微笑み、すぐに鼻歌が聞こえてきた。
昼頃、インターホンが鳴った。
「はい、あっ!弘君、そのまま上がってきて」
早苗は受話器を持ったまま振り返り、
「弘君、来たよ!」
と嬉しそうに言った。
しばらくすると、
「お疲れです、弘でーす」
と玄関から声がした。
私が玄関に行くと、弘は目で合図するように軽く頭を下げた。
「弘君、久しぶり、上がって!」
早苗が私の肩越しに弘に言った。
「早苗姐さん、久しぶりっす!めっちゃ、いい匂いしてるっすね!」
いつもの調子で言い、靴を脱いだ。
三人でリビングに移動し、早苗はすぐにキッチンに向かう。
私と弘は当たり障りない会話をする。
「今日は店の方はどうだ?」
「はい、今んとこ夜に予約が五本入ってるっす」
そんなやりとりをしていると、
「お待たせー!出来たよ!」
と早苗が両手に皿を持ち、リビングに入ってきた。
「有り合わせで作ったんだけど、いっぱい食べてね」
そう言いながら、テーブルに皿を並べた。
私の好きな目玉焼き付きのナポリタンだった。
「美味そう!俺の超大盛りっすね!いただきまーす!」
弘はフォークで麺を啜りながら食べる。
「早苗姐さん、これ美味いっす!この目玉焼きがいいっすね!」
弘は口の周りをケチャップで赤くしながら言う。
「良かった、たくさん作ったからいっぱい食べてね」
「もちろん、おかわりするっす!」
早苗と弘は笑った。
何気ない光景だった。
私はそんな早苗と弘を見ながら、これでいいんだと思った。

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