38話「色褪せていた景色」

裁判所へ向かう車中で、慣れ親しんだ街並みも今日は違って見えた。

いつもと何ら変わらないはずなのに、しばらく見られないと思っているからなのか、色褪せたように感じる。

裁判所に着き、長い廊下を法廷へと進む。

刑務官の靴のコツコツという音と、履き慣れたスリッパのペタペタという音だけが響いていた。

法廷に入ると、これまでとは違う静けさに包まれているように感じた。判事が来るまで椅子に座って待機する。検事や書記官が紙をめくる音だけが響いている。

判事が入ってきた。

いよいよ来るべき時が来た。緊張なのか武者震いなのか、身体が少し震えた。

「被告人、前へ」

私は法廷の真ん中に立つ。

「それでは判決を言い渡します」

心臓の鼓動が激しくなり、地に足がついていないような感覚になった。

「主文、被告人を懲役三年に処する。しかし四年間刑の執行を猶予する。被告人をその猶予期間中、保護観察に付する」

後ろで刑務官が手錠をしまうガチャガチャという音が響いている。

えっ。まさか執行猶予なのか。

信じられず、突っ立ったままでいた。判事が何か話していたが、頭に何も入ってこない。

刑務官の「おい、行くぞ」の声で我に返った。

手錠なしで法廷を出て歩くが、まだ実感がわかない。

外に出ると、さっきまでとは何もかもが違って見えた。

色褪せていた景色がカラーになったように、キラキラと輝いて見える。

帰りの車中で刑務官が言った。

「お前、運が良かったな。温情判決だ」

拘置所に着くと、初日に通された部屋へ入れられた。

しばらくすると、あの暴力団のような刑務官がしかめっ面で入ってきた。

「私物を確認しろ」

井原君が片付けてくれていたのだろう、衣装ケースに入った私物が置かれていた。

「せっかくもらったチャンスだ。もう戻ってくるんじゃないぞ」

「はい」と答えた。

私の顔がニヤついていたのか、

「ニヤつくな!そんな事じゃまたすぐに戻ってくる事になるぞ!この馬鹿が!」

最後にまた怒鳴られた。

「馬鹿が!」に始まり、最後もまた「馬鹿が!」で終わりかと、思わずニヤついてしまった。

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