16話「天国から地獄」

同じ房で過ごす時間が増えると、自然と会話も増えていった。

お爺さんは六十代、組員の人は三十代と世代は違っていたが、偶然にも同じ街で生活していたことがあり、話はよく弾んだ。

特に組員の人とは、私と共通の知り合いがいたこともあり、二人で話し込むことが多かった。

今まで知らなかったヤクザの本音や建前。

暴力団という存在自体が裏稼業だが、その世界の中にも表と裏があることを知った。

知らないことだらけだった。

そんな変わりない日々が続いていたが、ある日、お爺さんの判決公判の日がやってきた。

お爺さんは朝からニコニコしていて、どこか落ち着かない様子だった。

弁護士から執行猶予になると太鼓判を押されていたからだ。

公判に出かける前、お爺さんは私物をすべて整理していた。

それから私と組員の人に、丁寧にお別れの挨拶をして裁判所へ連れて行かれた。

「二人部屋はないから、誰か入ってくるか、二人とも独居になるかだな」

組員の人がそう言った。

また一人か。

別れも突然やってくるんだな、と思った。

しばらくして、ガチャガチャと鍵の音がしてドアが開いた。

何事かと思って顔を上げると、そこに立っていたのは――お爺さんだった。

えっ、どういうことだ。

状況を把握できないでいると、組員の人が静かに声をかけた。

「やっぱり、ダブル執行はダメだったか」

お爺さんは、以前に執行猶予の判決を受けており、それから三十年が経っていた。

弁護士は今回も大丈夫だと言っていたらしい。

だが、結果は違った。

お爺さんはひどく落ち込み、目に涙を浮かべていた。

食事ものどを通らない様子だった。

組員の人は経験があるのか、冷静にお爺さんを諭していた。

自分は、なんて声をかけていいのか分からなかった。

かける言葉も見つからなかった。

天国から地獄、という言葉しか思い浮かばなかった。

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