「任せて!」
早苗の力強い一言を聞き、私は自然と笑みを浮かべた。
「よし! それじゃ今度は俺たちの出番だな」
私は弘の方を見て言う。
「俺たちの出番?」
早苗が首を傾げた。
「うん。早苗がホームページも口コミサイトも作ってくれたんだから、今度は俺たちが営業して掲載してくれる店を探さないとな。なあ、弘」
「はい! 俺、頑張るっす!」
弘は勢いよくガッツポーズを作る。
その姿を見て私は笑った。
「と言っても、動くのはほとんど弘だけどな」
「そんなことないっすよ。兄貴が指示してくれないと、俺、分からんことだらけっすから」
照れ笑いを浮かべる弘に、私も思わず頷いた。
すると早苗が何か思いついたように口を開く。
「それじゃ私、掲載内容の説明とホームページの制作や管理について、分かりやすく書面にまとめるね」
「書面に?」
「うん。その方が会社っぽいし、お店にも説明しやすいでしょ?」
私は感心しながら頷いた。
「うん、それがいいな。それで会社名はLINK CORPORATIONを使おう」
「うん、分かった!」
早苗は嬉しそうに微笑んだ。
三人で新しく始まる口コミサイトのことを話していると、一階から玄関の扉が開く音が聞こえた。
「ただいまー!」
綾さんと真希の明るい声が響く。
「ちょっと待ってて」
早苗はそう言うと席を立ち、部屋を出て階段を下りて行った。
部屋には私と弘だけが残る。
「兄貴、この後はどこへ行く予定なんすか?」
「そうだな。まずはリトに増築するお金を渡しに行かないとな」
「了解っす!」
弘は元気よく頷いた。
そんな話をしていると、再び階段を上ってくる足音が聞こえ、早苗が部屋へ戻ってきた。
「ねえ、今日の夜は忙しい?」
「どうしてだ?」
「あのね、今日仕事が早く終わりそうなの。それで、新しく入った女の子と真希ちゃんの歓迎会を兼ねて、みんなで食事に行こうと思ってるんだけど……あなたと弘君も来れないかな?」
その言葉を聞いた瞬間、私は以前リトが言った言葉を思い出した。
――サナエさん紹介してヨ。
「今日リトと会う予定なんだけど、その場にリトも来てもいいか?」
そう尋ねると、早苗の表情がぱっと明るくなった。
「うん! 全然いいよ! 私も前から会ってみたかったし!」
「歓迎会にリトも来るって、いいっすね!」
弘も嬉しそうに声を上げる。
「お前は賑やかなことが好きなだけだろ」
私が笑うと、
「違うっすよ! みんなと親睦を深めたいだけっすよ」
弘は真面目な顔をして言い返す。
「お前は本当に調子のいい奴だな」
そのやり取りに、早苗もくすりと笑った。
「店はもう決まってるんすか?」
弘が尋ねる。
「まだ決めてないよ。真希ちゃんや新しく入った女の子に何が食べたいか聞いてから決めようと思って」
すると弘は勢いよく立ち上がった。
「それじゃ俺、真希ちゃんたちに何が食べたいか聞いてくるっすね!」
そう言うなり部屋を飛び出し、軽快な足音を響かせながら階段を駆け下りて行った。
私は苦笑いする。
「あいつ、こういうことは本当に行動が早いな」
「ふふっ、そうだね」
早苗は笑うと、少しだけ照れたように私を見つめた。
「ちょうど、あなたが拘置所から帰ってきて一年になるし……二人だけの秘密のお祝いも兼ねての食事会だね」
私は少し笑って尋ねた。
「二人きりじゃないけど、いいのか?」
早苗はゆっくりと首を振る。
「ううん、いいの。だって、みんながいるから今の私とあなたがあるんだから」
その言葉を聞き、私は静かに窓の外へ目を向けた。
拘置所を出たあの日には想像もしなかった。
こうして仲間に囲まれ、未来の話をしながら笑い合える日が来るなんて。
そんな穏やかな時間が、今では当たり前になろうとしている。
「リトにも初めて会えるし、楽しみだな」
早苗が優しく微笑む。
そのときだった。
バタバタバタッ――。
勢いよく階段を駆け上がる足音が聞こえ、ドアが勢いよく開いた。
「兄貴! みんな焼肉がいいみたいっす! 今日は焼肉にしましょう!」
満面の笑みで叫ぶ弘を見た瞬間、私と早苗は顔を見合わせ、同時に吹き出した。
部屋には、しばらく三人の笑い声が響いていた。

コメント