弘はエンジンをかけると、嬉しそうに私を見た。
「兄貴、今日はどこに行ったらいいっすか?」
「とりあえず茉莉花に行くぞ。ローズファミリーのホームページができたって早苗から連絡があったんだ」
「了解っす!」
弘は元気よく返事をすると、ハンドルを切り車をゆっくりと走らせた。
途中、私は洋菓子店へ寄ってもらい、早苗や女の子たちへの差し入れにケーキを買う。
再び車を走らせ、しばらくすると茉莉花へ到着した。
玄関の扉を開け中へ入ると弘が元気よく声をかける。
「お疲れっす!」
その声に反応して、リビングから早苗が顔を出した。
「あらっ、弘君も一緒だったんだ」
そう言って笑顔を見せる。
するとリビングから里奈ちゃんも顔をのぞかせた。
「あっ、弘君来たの? 二人とも久しぶりー!」
「里奈さん、お疲れっす!」
弘も笑顔で頭を下げる。
私は手に持っていた紙袋を早苗へ差し出した。
「これ、差し入れ」
「ありがとう! ここのケーキ美味しいんだよね」
早苗が嬉しそうに受け取ると、里奈ちゃんが目を輝かせた。
「ケーキ!? やったぁ! ありがとう直人君!」
そう言って紙袋を受け取ると、
「みんなで食べよう!」
とはしゃぎながら弘の手を引っ張ってリビングへ戻っていく。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」
弘の慌てた声に、リビングから女の子たちの笑い声が響いた。
私はその様子を見て思わず笑みを浮かべる。
「上に行くから」
そう言って二階を指差すと、早苗は頷いた。
「うん。コーヒー淹れてから行くね」
私は階段を上がり、二階の部屋へ入る。
ソファーへ腰を下ろすと、一階から里奈ちゃんや弘、女の子たちの賑やかな笑い声が聞こえてきた。
その声を聞いているだけで、店の温かな空気が伝わってくる。
しばらくすると早苗がコーヒーとケーキを持って部屋へ入ってきた。
「お待たせ」
テーブルへコーヒーとケーキを並べると、私の隣へ腰を下ろす。
私はコーヒーを一口飲み、ふと思い出したように聞いた。
「綾さんと真希は?」
「二人とも送迎に出てるよ。真希ちゃん、スタッフ経験があるから仕事の流れも分かってるし、本当に助かってる」
「それなら良かったじゃないか」
私がそう言うと、早苗は嬉しそうに頷いた。
「あっ、そうそう。昨日の夜アッちゃんに来てもらったんだよね」
「口コミサイトのことでか?」
「うん。ほとんど完成してるんだけど、どうしても分からないところがあってね」
そう言うと、早苗はテーブルの上に置いてあったノートパソコンを開いた。
「ねぇ、ローズファミリーのホームページ見てみてよ」
マウスを操作すると、画面にホームページが表示される。
黒を基調とした落ち着いたデザイン。
上品で見やすく、それでいて店の雰囲気がしっかりと伝わってくる。
早苗はページを切り替えながら説明していく。
画面にはシステム案内や料金表、女の子紹介などが見やすく並び、必要な情報がすぐに見つけられるよう工夫されていた。
どのページも分かりやすく整理され、初めて見る人でも安心して利用できそうな仕上がりだった。
私は思わず画面に見入ってしまう。
「……これ、すごいじゃないか」
その一言しか出てこなかった。
早苗は少し照れたように笑う。
「そうかなぁ。これで大丈夫?」
私はもう一度画面へ目を向けた。
想像していた以上だった。
「すごいなんてもんじゃない。大丈夫どころか、完璧じゃないか」
早苗はホッとしたように胸をなで下ろす。
「良かったぁ」
「本当にすごいな。ここまで仕上げるとは思わなかった」
そう言うと、早苗は少し得意そうな笑みを浮かべた。
「まぁね。私が本気出したらこんなもんだよ」
私は思わず吹き出した。
「そうだったな。忘れてたよ」
「でしょ?」
二人で顔を見合わせて笑う。
完成したホームページの画面を見つめながら、私は静かに思った。
ここまで来るのに、みんなが力を貸してくれた。
その積み重ねが、今こうして一つの形になったのだと、私は改めて感じていた。

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