272話「形になった想い」

弘はエンジンをかけると、嬉しそうに私を見た。

「兄貴、今日はどこに行ったらいいっすか?」

「とりあえず茉莉花に行くぞ。ローズファミリーのホームページができたって早苗から連絡があったんだ」

「了解っす!」

弘は元気よく返事をすると、ハンドルを切り車をゆっくりと走らせた。

途中、私は洋菓子店へ寄ってもらい、早苗や女の子たちへの差し入れにケーキを買う。

再び車を走らせ、しばらくすると茉莉花へ到着した。

玄関の扉を開け中へ入ると弘が元気よく声をかける。

「お疲れっす!」

その声に反応して、リビングから早苗が顔を出した。

「あらっ、弘君も一緒だったんだ」

そう言って笑顔を見せる。

するとリビングから里奈ちゃんも顔をのぞかせた。

「あっ、弘君来たの? 二人とも久しぶりー!」

「里奈さん、お疲れっす!」

弘も笑顔で頭を下げる。

私は手に持っていた紙袋を早苗へ差し出した。

「これ、差し入れ」

「ありがとう! ここのケーキ美味しいんだよね」

早苗が嬉しそうに受け取ると、里奈ちゃんが目を輝かせた。

「ケーキ!? やったぁ! ありがとう直人君!」

そう言って紙袋を受け取ると、

「みんなで食べよう!」

とはしゃぎながら弘の手を引っ張ってリビングへ戻っていく。

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

弘の慌てた声に、リビングから女の子たちの笑い声が響いた。

私はその様子を見て思わず笑みを浮かべる。

「上に行くから」

そう言って二階を指差すと、早苗は頷いた。

「うん。コーヒー淹れてから行くね」

私は階段を上がり、二階の部屋へ入る。

ソファーへ腰を下ろすと、一階から里奈ちゃんや弘、女の子たちの賑やかな笑い声が聞こえてきた。

その声を聞いているだけで、店の温かな空気が伝わってくる。

しばらくすると早苗がコーヒーとケーキを持って部屋へ入ってきた。

「お待たせ」

テーブルへコーヒーとケーキを並べると、私の隣へ腰を下ろす。

私はコーヒーを一口飲み、ふと思い出したように聞いた。

「綾さんと真希は?」

「二人とも送迎に出てるよ。真希ちゃん、スタッフ経験があるから仕事の流れも分かってるし、本当に助かってる」

「それなら良かったじゃないか」

私がそう言うと、早苗は嬉しそうに頷いた。

「あっ、そうそう。昨日の夜アッちゃんに来てもらったんだよね」

「口コミサイトのことでか?」

「うん。ほとんど完成してるんだけど、どうしても分からないところがあってね」

そう言うと、早苗はテーブルの上に置いてあったノートパソコンを開いた。

「ねぇ、ローズファミリーのホームページ見てみてよ」

マウスを操作すると、画面にホームページが表示される。

黒を基調とした落ち着いたデザイン。

上品で見やすく、それでいて店の雰囲気がしっかりと伝わってくる。

早苗はページを切り替えながら説明していく。

画面にはシステム案内や料金表、女の子紹介などが見やすく並び、必要な情報がすぐに見つけられるよう工夫されていた。

どのページも分かりやすく整理され、初めて見る人でも安心して利用できそうな仕上がりだった。

私は思わず画面に見入ってしまう。

「……これ、すごいじゃないか」

その一言しか出てこなかった。

早苗は少し照れたように笑う。

「そうかなぁ。これで大丈夫?」

私はもう一度画面へ目を向けた。

想像していた以上だった。

「すごいなんてもんじゃない。大丈夫どころか、完璧じゃないか」

早苗はホッとしたように胸をなで下ろす。

「良かったぁ」

「本当にすごいな。ここまで仕上げるとは思わなかった」

そう言うと、早苗は少し得意そうな笑みを浮かべた。

「まぁね。私が本気出したらこんなもんだよ」

私は思わず吹き出した。

「そうだったな。忘れてたよ」

「でしょ?」

二人で顔を見合わせて笑う。

完成したホームページの画面を見つめながら、私は静かに思った。

ここまで来るのに、みんなが力を貸してくれた。

その積み重ねが、今こうして一つの形になったのだと、私は改めて感じていた。

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