早苗に話さなければいけない。
だが、どう説明すればいいのか考えあぐねていた。本当のことは言えない。
そう考えていると、コンコンと窓ガラスを叩く音がした。
「お待たせー!」
早苗が乗り込んできた。
今夜、話さなければならない。
そう思ったが、部屋で面と向かって話すと嘘がばれてしまいそうな気がした。
だから、ドライブしながら話そうと思い、
「少しドライブ行かない?」と誘ってみた。
「えー! 行きたい! 行く行く!」
早苗は足をぱたぱたさせて喜んだ。
「よし、それじゃ夜景を見に行こうか」
「やったあ! レッツゴー!」
無邪気にはしゃぐ声が車内に広がった。
夜のきらめく街中を抜け、やがて光もまばらになっていく。
早苗はお気に入りの音楽を聴きながら、窓の外を眺めている。
「二人で夜景を見に行くの、久しぶりだね」
「本当だよ。もう何年もデートなんてできないかもって思ってたんだから」
そう言いながら腕を絡ませ、肩に顔を寄せてきた。
私はその手をぎゅっと握った。
「あのね。今日、二人目の人から仕事の話があったんだ」
「へぇ、どんな仕事なの?」
「あの人が持ってくる話だから、当然女の子関係の仕事なんだけどね。明日、経営者も交えて詳しい話があるってことだから」
また嘘をついた。
早苗は、そんなに慌てて探さなくても自分が働いているから大丈夫だと言ってくれた。
その言葉を聞きながら、私はさらに嘘を重ね、裏切ったような気持ちになった。
自分で、自分をろくな人間ではないと思った。
それでも金が必要だ。
早苗と良い暮らしをしたい。
これは二人のためなのだと、自分に言い聞かせ、無理やり納得させた。
久しぶりに見る夜景に心を奪われた。
街の明かりがゆらゆらと揺れている。
夜更けのせいか、人の姿はない。
早苗はそっと抱きつき、黙って夜景を見つめていた。
私はふと後ろを振り返った。
山は漆黒の闇に沈んでいる。
その闇があるからこそ、夜景は際立つ。
まるで、世の中の表と裏のように思えた。

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