恵美さんだった。
私がBARに勤めていた頃に知り合った女性で、その当時、短い期間ではあるが付き合っていた。
二人目の男性は「えっ!知り合いなの?」と驚いている。
恵美さんは意味深に
「彼のことはよく知ってるわよ」
と私を見たまま言った。
「それじゃあ、俺は役目終わりだな」
そう言って立ち上がり、私の肩を叩くと
「今度、飯くらい奢れよ」と店を出て行った。
恵美さんは椅子に腰を下ろし、アイスティーを注文した。
三十半ば。クラブのママのような雰囲気で、どこか怪しく掴みどころのない人だ。
煙草を燻らせながら、
「馬鹿なことして、捕まっていたそうね。いつ帰ってきたの?」
そう聞かれ、私はある程度の事情を説明した。
「話はある程度聞いているわ。人を探してるんだってね。ここじゃあれだから場所を変えようか」
そう言って席を立った。
その店は飲み屋街の外れにある、静かで落ち着いたBARだった。
店内にはマスターしかいない。
カウンターに並んで座り、恵美さんは水割り、私は車なのでトニックウォーターを頼んだ。
恵美さんは煙草に火をつけ、ゆっくり水割りを二、三口飲むと、前を見たまま言った。
「貴方の探している人、知ってるわよ。教えてあげてもいいわ」
「えっ。本当ですか?」
そう返すと、私をじっと見て、
「その代わりじゃないけど、お願いがあるの」
聞けば、手伝ってほしいことがあるという話だった。
次の店に移動しようと言われたが、このあと用事があると伝え、別れることにした。
「じゃあ、明日連絡して」
そう言われ、店を後にした。
早苗を迎えに行った。
どう説明しようか考えていると、助手席の窓をコンコンと叩き、早苗が「お待たせー!」と乗り込んできた。
その顔を見た瞬間、なぜかホッとした。
安心したのだ。

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