44話「焼肉と約束」

早苗に迎えに行くと連絡を入れ、店の近くで待っていた。

佐藤さんから頼まれた件を考えていると、バックミラーの中で早苗がキョロキョロと私の車を探しているのが見えた。

クラクションを鳴らすと気付き、小走りで駆けてくる。

車に乗り込んできた瞬間、夜の世界の匂いがした。

私も少し前まで身を置いていた夜の世界。今では遠い昔のことのように感じる。

早苗を食事に誘うとすごく喜んだ。

「ちょっと臨時収入があったから、早苗の好きな焼肉に行こう」

「マジで!やったぁ!」

予想以上にはしゃぎ、子供のように喜んでいた。

「でも仕事もしていないのに臨時収入って大丈夫なの?」

少し不安げに聞く早苗に、

「心配しなくて大丈夫だよ。食事しながら詳しいことは話すから」

そう答えると安心したらしく、鼻歌を歌い始めた。

奮発して高めの焼肉店に入った。

夜遅い時間にもかかわらず、水商売のアフターらしい客や、飲み終えたサラリーマンで賑わっている。

店内には久しぶりの焼肉の匂いが充満していた。

外の世界に戻って初めての焼肉だ。

個室に通され、注文を済ませると

「ねえ、何があって臨時収入があったの?」

と急かすように聞いてきた。

先輩のこと、佐藤さんのこと、頼まれた件について話した。

早苗は黙って聞いていたが、口はモグモグと動いている。

それでも食べ頃の肉を取り皿に入れてくれたり、サンチュに包んで渡してくれたりした。

久しぶりの焼肉に箸が止まらない。口いっぱいに頬張りながら話す。

やがて早苗が箸を置き、

「で、どうするの? 探すのなら私も力になりたい」

と言ってくれた。

「ありがとう」

私は佐藤さんの件で動くことに決めた。

食事のあと、早苗とドライブをしながら探し方を考える。

佐藤さんの話からすると、風俗関係の仕事をしているのではないかと思った。

早苗には店のママや知り合いをあたってもらうことにした。

私は暴力団関係の知人に聞いてみるつもりだ。

その夜はマンションには帰らずホテルに泊まった。

早苗が眠ったあと、五百万のことを考える。

そんな大きな金額の取り立てのようなことが、私にできるのだろうか。

私が動くことで悪い結果になったらどうしよう。

だが、何かのチャンスかもしれない。

チャンスは逃したくない。

私はこの件に真剣に取りかかることに決めた。

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