早苗に迎えに行くと連絡を入れ、店の近くで待っていた。
佐藤さんから頼まれた件を考えていると、バックミラーの中で早苗がキョロキョロと私の車を探しているのが見えた。
クラクションを鳴らすと気付き、小走りで駆けてくる。
車に乗り込んできた瞬間、夜の世界の匂いがした。
私も少し前まで身を置いていた夜の世界。今では遠い昔のことのように感じる。
早苗を食事に誘うとすごく喜んだ。
「ちょっと臨時収入があったから、早苗の好きな焼肉に行こう」
「マジで!やったぁ!」
予想以上にはしゃぎ、子供のように喜んでいた。
「でも仕事もしていないのに臨時収入って大丈夫なの?」
少し不安げに聞く早苗に、
「心配しなくて大丈夫だよ。食事しながら詳しいことは話すから」
そう答えると安心したらしく、鼻歌を歌い始めた。
奮発して高めの焼肉店に入った。
夜遅い時間にもかかわらず、水商売のアフターらしい客や、飲み終えたサラリーマンで賑わっている。
店内には久しぶりの焼肉の匂いが充満していた。
外の世界に戻って初めての焼肉だ。
個室に通され、注文を済ませると
「ねえ、何があって臨時収入があったの?」
と急かすように聞いてきた。
先輩のこと、佐藤さんのこと、頼まれた件について話した。
早苗は黙って聞いていたが、口はモグモグと動いている。
それでも食べ頃の肉を取り皿に入れてくれたり、サンチュに包んで渡してくれたりした。
久しぶりの焼肉に箸が止まらない。口いっぱいに頬張りながら話す。
やがて早苗が箸を置き、
「で、どうするの? 探すのなら私も力になりたい」
と言ってくれた。
「ありがとう」
私は佐藤さんの件で動くことに決めた。
食事のあと、早苗とドライブをしながら探し方を考える。
佐藤さんの話からすると、風俗関係の仕事をしているのではないかと思った。
早苗には店のママや知り合いをあたってもらうことにした。
私は暴力団関係の知人に聞いてみるつもりだ。
その夜はマンションには帰らずホテルに泊まった。
早苗が眠ったあと、五百万のことを考える。
そんな大きな金額の取り立てのようなことが、私にできるのだろうか。
私が動くことで悪い結果になったらどうしよう。
だが、何かのチャンスかもしれない。
チャンスは逃したくない。
私はこの件に真剣に取りかかることに決めた。

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