39話「外に出た日」

拘置所の外に出た。

手錠も腰紐も刑務官もいない。

今までは外に出る時は最低でも二人は監視で付いていたが、今は一人だ。周りを見回しても誰もいない。

背後から呼び止める声も足音もない。

身体だけが軽くなったような妙な感覚があった。釈放されたという実感がゆっくりとわいてきた。

駐車場に行くと見覚えのある車の横に彼女が立っていた。

小さく手を振りながら駆け寄ってきた。

「お疲れさま」と言った彼女の顔は笑顔だったが、目が赤くなっていた。その顔を見た瞬間、ようやく外に出たのだと現実味が帯びた気がした。

彼女は私の身元引受人のような立場になってくれていたので、私は彼女のマンションの近くの保護司が担当になり、この先四年間、週一で近況報告のため会わなければならなかった。

彼女は「早苗」と呼ぶことにする。

早苗はラウンジで働いているが、今日は休みをもらっているから何でも付き合うと言ってくれた。

とりあえず着替えたらと紙袋に入った洋服を渡された。考えたら上下スウェットのままだった。

先に保護観察所に向かった。走る車から景色を見ていると、朝まで拘置所にいたのが信じられないように感じた。

何もかもが新鮮だった。外の空気を吸い込む感覚、流れてくる音楽、人混みのざわめき、女性の香水や化粧品の香り、煙草の匂い。肺に入る空気さえ懐かしく、新鮮に感じた。

空気を吸い込むたびに外の重みを感じた。これから始まる時間がどんなものになるのか、この時の私はまだ知らなかった。

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