裁判所へ向かう車中で、慣れ親しんだ街並みも今日は違って見えた。
いつもと何ら変わらないはずなのに、しばらく見られないと思っているからなのか、色褪せたように感じる。
裁判所に着き、長い廊下を法廷へと進む。
刑務官の靴のコツコツという音と、履き慣れたスリッパのペタペタという音だけが響いていた。
法廷に入ると、これまでとは違う静けさに包まれているように感じた。判事が来るまで椅子に座って待機する。検事や書記官が紙をめくる音だけが響いている。
判事が入ってきた。
いよいよ来るべき時が来た。緊張なのか武者震いなのか、身体が少し震えた。
「被告人、前へ」
私は法廷の真ん中に立つ。
「それでは判決を言い渡します」
心臓の鼓動が激しくなり、地に足がついていないような感覚になった。
「主文、被告人を懲役三年に処する。しかし四年間刑の執行を猶予する。被告人をその猶予期間中、保護観察に付する」
後ろで刑務官が手錠をしまうガチャガチャという音が響いている。
えっ。まさか執行猶予なのか。
信じられず、突っ立ったままでいた。判事が何か話していたが、頭に何も入ってこない。
刑務官の「おい、行くぞ」の声で我に返った。
手錠なしで法廷を出て歩くが、まだ実感がわかない。
外に出ると、さっきまでとは何もかもが違って見えた。
色褪せていた景色がカラーになったように、キラキラと輝いて見える。
帰りの車中で刑務官が言った。
「お前、運が良かったな。温情判決だ」
拘置所に着くと、初日に通された部屋へ入れられた。
しばらくすると、あの暴力団のような刑務官がしかめっ面で入ってきた。
「私物を確認しろ」
井原君が片付けてくれていたのだろう、衣装ケースに入った私物が置かれていた。
「せっかくもらったチャンスだ。もう戻ってくるんじゃないぞ」
「はい」と答えた。
私の顔がニヤついていたのか、
「ニヤつくな!そんな事じゃまたすぐに戻ってくる事になるぞ!この馬鹿が!」
最後にまた怒鳴られた。
「馬鹿が!」に始まり、最後もまた「馬鹿が!」で終わりかと、思わずニヤついてしまった。


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