ある日の午後、また突然ガチャガチャと施錠が解除された。
「25番、弁護士接見」
面会室に入ると、くたびれたスーツを着た、いつもの弁護士が座っていた。
私が入っても視線は上げず、手帳をめくっている。
「こんにちは」と声をかけながら椅子に座ると、
「ああ」とだけ返ってきた。
手帳を見たまま、弁護士は言った。
「えー、次回の公判は◯◯だけど、間違いないよね?」
「はい」と答えると、
「それじゃあ五回目の公判は求刑になるからね」
それだけだった。
「それじゃあ、また裁判所で」
義務感のような接見は、あっけなく終わった。
もう、その形だけのやり取りにも慣れていた。
房に戻ると、井原君がすぐに聞いてきた。
「どうだったですか?」
次の次が求刑だと伝えると、井原君は少し顔をしかめた。
「もし実刑になったら、26歳以下だから分類ですよね」
分類。
陣さんからも詳しく聞いていた。
一言で言えば――地獄だ。
分類センター。
初犯で26歳以下は必ず送られる場所。
一ヶ月から二ヶ月、そこで生活しなければならない。
殴る蹴るは日常茶飯事。
昼間は軍隊のような訓練。
しかも、この地域の管轄にある分類センターは、日本でも指折りだという噂だった。
井原君は、実際にそこを経験している。
話を聞くと、相当厳しかったらしい。
「分類と比べたら、刑務所の方がだいぶ楽ですよ」
経験者の言葉は、冗談に聞こえなかった。
現実味がありすぎた。
陣さんから聞いたときは、まだ実感の湧かない、ぼんやりとした想像だった。
だが、井原君の実体験の話は違った。
具体的で、生々しくて、逃げ場がなかった。
一気に現実味を帯び、不安が広がっていく。
気づけば、求刑が何年になるのかよりも、
分類のことで頭がいっぱいになっていた。
その日の夜、布団の中で私は分類にいる自分を想像していた。
整列させられている自分。
怒鳴られている自分。
うまくできずに取り残される自分。
務まるのだろうか。
これは避けては通れない道なのかもしれない。
後戻りはない。進むしかない。
そう自分に言い聞かせるしかなかった。

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