33話「覚悟を決めなきゃいけない夜」

ある日の午後、また突然ガチャガチャと施錠が解除された。

「25番、弁護士接見」

面会室に入ると、くたびれたスーツを着た、いつもの弁護士が座っていた。

私が入っても視線は上げず、手帳をめくっている。

「こんにちは」と声をかけながら椅子に座ると、

「ああ」とだけ返ってきた。

手帳を見たまま、弁護士は言った。

「えー、次回の公判は◯◯だけど、間違いないよね?」

「はい」と答えると、

「それじゃあ五回目の公判は求刑になるからね」

それだけだった。

「それじゃあ、また裁判所で」

義務感のような接見は、あっけなく終わった。

もう、その形だけのやり取りにも慣れていた。

房に戻ると、井原君がすぐに聞いてきた。

「どうだったですか?」

次の次が求刑だと伝えると、井原君は少し顔をしかめた。

「もし実刑になったら、26歳以下だから分類ですよね」

分類。

陣さんからも詳しく聞いていた。

一言で言えば――地獄だ。

分類センター。

初犯で26歳以下は必ず送られる場所。

一ヶ月から二ヶ月、そこで生活しなければならない。

殴る蹴るは日常茶飯事。

昼間は軍隊のような訓練。

しかも、この地域の管轄にある分類センターは、日本でも指折りだという噂だった。

井原君は、実際にそこを経験している。

話を聞くと、相当厳しかったらしい。

「分類と比べたら、刑務所の方がだいぶ楽ですよ」

経験者の言葉は、冗談に聞こえなかった。

現実味がありすぎた。

陣さんから聞いたときは、まだ実感の湧かない、ぼんやりとした想像だった。

だが、井原君の実体験の話は違った。

具体的で、生々しくて、逃げ場がなかった。

一気に現実味を帯び、不安が広がっていく。

気づけば、求刑が何年になるのかよりも、

分類のことで頭がいっぱいになっていた。

その日の夜、布団の中で私は分類にいる自分を想像していた。

整列させられている自分。

怒鳴られている自分。

うまくできずに取り残される自分。

務まるのだろうか。

これは避けては通れない道なのかもしれない。

後戻りはない。進むしかない。

そう自分に言い聞かせるしかなかった。

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