31話「手紙、書いていいですか」

井原君は、いつも落ち着いていた。

その雰囲気は、他の同世代の暴力団とは違っていた。

拘禁生活の経験が長いからなのか。

それとも、これまで生きてきた人生経験からくるものなのか。

理由は分からないが、井原君には常に余裕のようなものがあった。

私は、井原君と話す時間が少しずつ増えていった。

井原君の人生は、社会の中にいる時間よりも、塀の中にいる時間の方が長いらしかった。

両親との記憶はあまり残っておらず、祖母に育てられたという。

小学生くらいから施設で生活し、そこから学校に通っていたそうだ。

そうした人生経験からくるものなのか、

井原君はいつも、覚悟というか、腹を括っているように見えた。

私と井原君は、まったく違うタイプの人間だと思う。

それでも、なぜか互いに興味を持ち、次第に深い話をするようになっていった。

井原君は暴力団組員だった。

だが、私が知っているような現代的な暴力団というより、どこか不器用な、昔気質の暴力団のように感じられた。

井原君が言うには、今回は四、五年ほど刑務所に行かなくてはいけないだろう、とのことだった。

そんな話をしている時だった。

井原君は視線を合わせず、下を向いたまま、ぽつりと言った。

「この部屋も、いつバラバラになるか分からないですよね。

自分は、しばらくはここにいると思います。

バラされた時は……手紙、書いてもいいですか?」

私は少し間を置いてから答えた。

「もちろんですよ。

バラされた時は、すぐに手紙を書きますよ」

井原君は、何度かゆっくりと、深く頷いていた。

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