26話「地獄の沙汰も金次第」

拘置所では、土日祝日になると運動も入浴も面会も、手紙の発信さえもない。

房から外に出ることは、まずなかった。

雪がちらほら降っている日曜日。

陣さんが言っていた「地獄の沙汰も金次第」という言葉を、ぼんやりと考えていた。

やはり世の中はお金なのだろう。

すべてのものがお金で買えるとは思っていないし、すべてが解決できるとも思っていない。

それでも、かなりのことはお金でどうにかなる。

そう感じてしまった。

今までの自分は、お金に無頓着だった。

仕事を探す時も、給料を気にしたことはほとんどない。

あればあるだけ使い、後先を考えずに生きてきた。

世の中の表しか知らなかった。

だが今は、ほんの少しだけ裏側を知ってしまった。

現実には、罪を犯してもお金で良い弁護士を雇えば、保釈ですぐに社会に戻れる。

公判での判決も変わる。

下手をすれば起訴猶予や不起訴になり、起訴すらされないこともある。

やはり、このままではダメだ。

お金は持っていなければならない。

では、これから先どうやってお金を稼ぐのか。

自分には学歴もない。

今は、れっきとした前科一犯だ。

まともな会社で働くことなど、まず無理だろう。

それどころか、公判の結果次第では、刑務所に何年か務めなければならないかもしれない。

そんなことを考えていると、

「やかん用意!」

という声が鳴り響き、いつの間にか夕食の時間になっていた。

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