正月も終わり、また、いつもと変わらない毎日を淡々と消化していく日々に戻った。
その日は、突然やってきた。
朝食を済ませ、いつものように、みんな所定の位置に座った時だった。
ガチャガチャと施錠が解除され、ドアが開いた。
「60番。出房! 荷物も全部出せ!」
お爺さんは、慌てて私物をまとめ始めた。
私と組員の人は、ただじっと見ていることしかできなかった。
手伝うことも、会話をすることも許されない。
お爺さんは部屋を出ていく時、涙目で、合図をするように軽く会釈をして出ていった。
組員の人が、ぼそっと言った。
「思ったより早かったな」
私は、お爺さんの最後の表情が頭から離れず、何とも言えない気持ちになった。
すると組員の人が言った。
「俺たちも別々になるかもしれん。その時は、手紙を書くからな!」
ここでは、房が違えば、運動で一緒にならない限り、会うことも会話をすることもできない。
連絡を取る手段は、いったん拘置所から手紙を出し、また同じ拘置所に届けられるという仕組みになっている。
もちろん手紙にも決まりがある。
封書は便箋七枚までで、一日に発信できるのは二通まで。
検閲もあるため、そのあたりも考えて書かなければならない。
この頃には、組員の人とも、かなり親しくなっていた。
私は「はい。自分も書きます」と答えた。
その後、組員の人の予想通り、私と組員の人は、それぞれ独居房へ移されることになった。
ここでは、良いことも悪いことも、何の前触れもなく、突然やってくる。
この日、三人は、それぞれ別々の生活を始めた。
ここでは、別れもまた、日課のひとつだった。

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