あの出来事から、組員の人の励ましもあってか、お爺さんは覚悟を決めたようだった。
日が経つにつれ、少しずつ笑顔も戻ってきた。
顔つきも以前とは違い、どこかキリッとした、漢という表情に変わっていった。
お爺さんは控訴せず、懲役に行くつもりだと言っていた。
判決公判から二週間が経てば刑が確定し、未決囚から受刑者になる。
そんなある日、組員の人が言った。
「もう十二月だし、爺さんも、もうすぐ確定房に上がるだろ。お別れ会も兼ねて、忘年会をしよう」
お爺さんは大喜びで、大賛成だった。
私は一瞬、耳を疑った。
忘年会? こんな場所で?
どんな忘年会で、どんなお別れ会なんだろうと思った。
話を聞くと、拘置所では領置金があれば嗜好品や日用品を購入できるという。
それは知っていて、私もいくつか買い物をしていた。
その購入できる物の中に、お弁当があるらしい。
しかも、松・竹・梅とランクまであるという。
三人で相談して、一番高額な二千円のお弁当を注文することにした。
これで、ささやかながら明日の夜は忘年会だ。
そう決まった。
一般社会、いわゆる娑婆以外で初めて迎えるクリスマス。
年末年始のことを思うと、正直、ゲンナリして落ち込んでいた。
だが、ささやかな楽しみが一つ出来た。
布団に入り、明日の夜は忘年会だと考える。
それだけで、寒さの中に少しだけ暖かさがあった。
人の気持ちや思いやりというものは、こんな場所でも確かに存在していた。

コメント