同じ房で過ごす時間が増えると、自然と会話も増えていった。
お爺さんは六十代、組員の人は三十代と世代は違っていたが、偶然にも同じ街で生活していたことがあり、話はよく弾んだ。
特に組員の人とは、私と共通の知り合いがいたこともあり、二人で話し込むことが多かった。
今まで知らなかったヤクザの本音や建前。
暴力団という存在自体が裏稼業だが、その世界の中にも表と裏があることを知った。
知らないことだらけだった。
そんな変わりない日々が続いていたが、ある日、お爺さんの判決公判の日がやってきた。
お爺さんは朝からニコニコしていて、どこか落ち着かない様子だった。
弁護士から執行猶予になると太鼓判を押されていたからだ。
公判に出かける前、お爺さんは私物をすべて整理していた。
それから私と組員の人に、丁寧にお別れの挨拶をして裁判所へ連れて行かれた。
「二人部屋はないから、誰か入ってくるか、二人とも独居になるかだな」
組員の人がそう言った。
また一人か。
別れも突然やってくるんだな、と思った。
しばらくして、ガチャガチャと鍵の音がしてドアが開いた。
何事かと思って顔を上げると、そこに立っていたのは――お爺さんだった。
えっ、どういうことだ。
状況を把握できないでいると、組員の人が静かに声をかけた。
「やっぱり、ダブル執行はダメだったか」
お爺さんは、以前に執行猶予の判決を受けており、それから三十年が経っていた。
弁護士は今回も大丈夫だと言っていたらしい。
だが、結果は違った。
お爺さんはひどく落ち込み、目に涙を浮かべていた。
食事ものどを通らない様子だった。
組員の人は経験があるのか、冷静にお爺さんを諭していた。
自分は、なんて声をかけていいのか分からなかった。
かける言葉も見つからなかった。
天国から地獄、という言葉しか思い浮かばなかった。

コメント