13話「合図を待つ時間」

寒さで目が覚めた。

昨日と同じ天井が視界に入る。

夢だったらよかったのに、と思う前に、ここが拘置所だという事実が先に身体に伝わってきた。

布団に入ったままぼーっとしていると、スピーカーから聞き覚えのあるクラシックの爽やかな音楽が流れてきた。

この場所にはまったく似つかわしくない音楽だ、などと考えていると、

「起床ー!」という声が響きわたり、一気に現実に引き戻された。

留置場と違い、拘置所の朝はすごく慌ただしい。

合図とともに素早く起きて布団をたたむ。

たたみ方も方向や四隅の合わせ方、布団の重ね方まで、すべて事細かに決められている。

次は掃除だ。

自分は新入りだからトイレ掃除。

トイレは和式で、便器には小便が溜まっている。

流し忘れかと思っていたが、あとで聞くと、消灯以後は水を流してはいけない決まりだそうだ。

留置場で習ったように、雑巾だけで便器を磨く。

水が冷たすぎて、早くも手の感覚がなくなった。

急いで手を洗い、一列に正座する。

それから刑務官が点呼をとりにくる。

「四房、番号!」

一人ひとりが気合いの入った声で、自分の称呼番号を叫ぶ。

自分は

「25番、声が小さい!やり直し!」

と怒鳴られた。

点呼が終わると、また合図の連続でお茶が配られ、次は配食となる。

質素な朝食ではあるが、温かい味噌汁とご飯が出るだけでも嬉しい。

寒いから、尚更だ。

食事を終えると、急いで歯磨きなどをすませ、机を出して所定の位置に座る。

また次の合図を待つ時間がやってくる。

拘置所は基本的に未決囚が入る場所なので、刑務所のような作業はない。

ただひたすら座って過ごす。

勝手に歩き回ることも許されない。

何をするにも、自分の意思は関係なく、命じられた通りに従うだけだ。

それでも身体は、もう流れを覚え始めていた。

拘置所での二日目が、静かに動き出していた。

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